筆者の自宅は、住宅ローンを組んで新築した物件なのですが、晴れてローンを完済することができましたので、早速、抵当権の抹消登記を行うことにしました。
日本の不動産登記は、法務局で行うこととなっており、地域ごとに担当局が決まっています。不動産登記に関する変更処理は、地域を管轄する法務局に書類提出が必要です。
この作業を司法書士に依頼すると、1.5万円~2.0万円の手数料が発生するため、今回はすべてDIYで行ってみました。
(注記)本記事は、新築一戸建て、または、マンションの住宅ローンを組んで、追加の抵当権設定なく、そのまま完済したパターンになります。抵当権が2者以上となる場合は、複数の申請手続きが必要となるため、司法書士に依頼するほうが処理が早いと思います。
最初に実施した事項を記載します
筆者の環境で抵当権の登記を抹消するには、次の3書面の提出が必要でした。
申請要領は法務局から詳述されているので、事前に目を通しておくと良いでしょう。
- 登記申請書:登記名義人住所・氏名変更:購入したとき旧住所のままであることが大半であるため、最初に名義人の住所変更が必要。
- 登記申請書:抵当権抹消:支払い困難になると競売で精算できるよう、金銭を貸し出した金融機関の抵当権が設定される。住宅ローンを完済すると抵当を抹消することができる。
- 登記申請書:根抵当権抹消(ねていとう):ローン契約時にキャッシング契約などが付帯される場合は、根抵当が設定される。抵当権とは異なるため、別に抹消手続きが必要。
DIYでの手続きはオンラインより窓口提出が容易
筆者はIT関係の仕事をしているので、オンライン手続きのPC環境を整備してみましたが、以下の理由により素人がDIYで行う場合は、法務局に出向いて紙申請で行うほうが容易だと思いました。
- 添付書類は2日以内に窓口(または簡易書留郵送)で提出する必要がある
- 登記の申請用総合ソフトは操作に慣れが必要(プロの司法書士向けに設計されている)
- 指摘があると修正もオンラインで行う必要があり、単なる修正にPC環境の制約がでてしまう
登記申請書の作り方
抵当権の登記の抹消手続きは、以下の法務局で定められた書面を提出するだけであるため、住宅ローン完済程度の規模であれば、素人でも十分できます。
- 登記申請書:あらかじめ自分でで作成します。
- 添付資料:登記識別情報、登記原因証明情報(「解除証書」や「弁済証書」)、代理権限証明情報(委任状)などです。
- 登録免許税(手数料):1件あたり1,000円の費用が発生しますが、通常は土地(1件)と建物(1件)の計2件となり2,000円になります。現金ではなく収入印紙貼り付けを行います。
作成方法詳細については、法務局のページで手順書が整備されており、そちらを参照いただくとして、本記事は間違えやすいポイントを主に解説します。
(手順1)添付する資料を収集する
最初に添付資料を集めることをお勧めします。なぜ最初にするかというと、添付資料は法務局でそろう資料ではないため、手元にないと振り出しに戻るからです。
- 登記識別情報:抵当権者である金融機関から送付されます。
- 登記原因証明情報:「解除証書」や「弁済証書」といった内容で、抵当権者である金融機関等から送付されます。
- 代理権限証明情報(委任状):抵当権者である金融機関等から送付されます。
- 住民票:登記に記載されている所有権者の住所が異なる場合に必要です。
- 添付資料のコピー:添付資料の原本を返還して欲しい場合はコピーの添付が必要です。DIYで申請する場合は、書類を返還してもらっても他に利用価値がないため、返還請求不要で問題はないです。(スキャナで画像は取っています)
(手順2)登記申請書を作成する
法務局のページに不動産登記の申請様式がありますので、持っているワープロソフト合わせた様式をダウンロードして、手順書通りに記載します。
Wordと一太郎のいずれも持っていない方は、Word形式でダウンロードして、フリーソフトのApache Open Officeをインストールして使うのが良いでしょう。PDF形式を印刷して手書きでも対応可能ですが、修正が入ったときに書き直しが必要となるのでお勧めしません。
ビジネス界のワープロソフトと言えば、Microsoft Wordがデファクトスタンダードなのですが、日本の公的機関では一太郎もまだまだ使われています。
※参考:一太郎は、1990年代のPC-9801シリーズで全盛だったワープロソフトで、全角文字の編集に特化しているため、今でも公的機関や小説執筆に使われ続けています。
DIYで登記申請書の記載する際の注意点としては、以下の事項がありました。
- 不動産登記を行える支局は管轄で決まっています。管轄支局は間違いのないように記載します。遠方からではオンライン+郵送で対応となるためDIY作業は困難です。遠方から登記申請する場合は、司法書士事務所に依頼するほうが早く・安く済むと思います。
- 権利者の住所は住民票と一致させておく必要があります。新築完成後に引っ越した場合は大抵は古い住所のままで登記された状態であるため、別途、住所変更の登記が必要となり、更に2,000円がかかります。
- 根抵当が設定されている場合は根抵当の削除も必要です。根抵当の削除には、別の登記申請書が必要となり、更に2,000円がかかります。
- 登記申請書に収入印紙貼り付けページをホチキス2点止め+割り印が必要:ここは細かく様式が決まっていますので、法務局の要領書通りに確実に合わせ込みしておきます。もしホチキスが手元に無くても、法務局で借してくれると思いますが、筆者は未検証です。
(手順3)法務局の申請窓口に持っていく
書類が出来たら、法務局に出向いて申請窓口で一次チェックしてもらいます。
法務局では一般者向けに相談窓口などのサービスも設定されていますが、電話予約が必要だったり、結構な手間がかかるので、自分で出来ることをすべてやって、申請窓口で直接チェックしてもらうのがおすすめです。
チェックがOKであれば、収入印紙を購入、所定の場所へ貼り付けて、申請窓口へ提出します。
提出後の法務局審査は約1週間くらいかかりますので、その場で登記完了予定日が提示されます。修正がある場合は、登記申請書に記載した電話番号に連絡が入り、再度法務局に出向いて修正を行う必要があります。
修正がなければ、完了日に法務局で、改定された登記をもらって作業完了となります。
なお、添付書類は抵当権の抹消手続きにしか使わないものなので、個人としては返却してもわなくても問題はないです。(スキャナでスキャンはしておきました)
添付資料が集まれば半日作業で終ります
筆者は、登記の住所が古いことに気づかず、以下の手順になってしまいました。サラリーマンなら、有給を取得して1日で完了できるレベルだと思います。
- 自宅(申請書作成)
- 法務局(窓口チェックでNG、土地・建物登記証明の取得が必要となり1,200円出費)
- 市役所(住民票取得)
- 自宅(住所変更の登記を作成)
- 法務局(申請書提出、3通:2,000円✕3=6,000円出費)
住宅ローンを組んだときは引っ越し前の古い住所で登記されているため、ほとんどの場合、住所変更が発生しますから、特に手戻りに気をつける必要がありました。
申請を通しての所感ですが、ホチキスや割り印などが、日本の契約書独特の方法となっており、DIYとしては結構楽しく出来ました。
ただ、複数者の抵当がついている物件などでは、申請書の不備が発見されるとむちゃくちゃ大変な作業がでると想定されるので、プロの司法書士事務所に依頼したほうが無難だと思います。
3日後に登記完了証を受領
登記完了の前日に法務局から、登記は明日完了するので書類を取りに来てほしいとの連絡をいただき、以下書類を受け取って作業完了です。
- 登記完了証:住所変更
- 登記完了証:6番根抵当権抹消 ※2通
- 登記完了証:5番抵当権抹消 ※2通
※注記:前の抵当権者に提出する必要がある場合あり、通常は2通だされるとのこと。
登記の抵当権抹消程度なら、DIYでも簡単にできました。登記に関する費用は意外に高いので、今回は経験出来て良かったです。