DIYによる失敗のないPoE LAN配線工事

Telecommunication

Netgear WAC510というWiFiアクセスポイントをWDSモードにて中継機として使っていましたが、稀に固まって自動再起動することがありました。

中継に用いていたWiFi 5GHz(802.11ac)の通信方式は、256値QAM(Quadrature Amplitude Modulation)であるため、壁などの障害物の減衰があるところで常時接続はあまり適さないようです。

今後の高速WiFiは1024QAMになり、通信品質よりも通信速度という方向であるため、思い切ってアクセスポイントを有線LAN接続に変えることにしました。

LAN配線は、建屋の加工がいらない床上配線にしました。ただし、少しでもケーブル露出を減らすため、アクセスポイント設置場所に近いLANモジュラー近辺にPoE HUBを移設し、アクセスポイントまでを余長なしの自作LAN配線で接続するお手軽施工を採用しました。

ところがこの自作LAN配線は、RJ45コネクタのカシメ作業は意外と経験が必要です。筆者は、過去に失敗しまくってコネクタが足らなくなるということもありましたので、本記事ではLANコネクタのカシメ作業のノウハウについて記載したいと思います。

準備するもの

  • Cat5eケーブル(単線100m箱売り)
  • RJ45コネクタかしめ工具
  • RJ45プラグ
  • LAN配線チェッカー

PoEのCat5eケーブルは単線仕様を使う

PoE(Power over Ethernet)は、HUBからDC48V電源を供給する仕組みですので、安価なより単線仕様では、経年劣化によるケーブル酸化により、PoE駆動ができなくなることがあります。

PoEを用いる場所はできるだけ全銅の単線Cat5Eケーブルを使います。線材の仕様は、通常の幹線工事は抜き差しが発生しないため、できる限り単線を使います。

より線は、取り回しがしやすいというメリットがありますが、かしめ工具でのコネクタ圧着が難しく、プロでも圧着ミスを発生させるので、より線を使う場合は、市販完成品を購入するほうが安上がりだと思います。

自作LAN配線のコネクタカシメ作業手順

自作LAN配線は道具が揃えば出来ますが、やり直しが出来ない工程を含むため、要領をよく理解してから作業するのが良いです。

(1)ケーブルの外皮をむく

ケーブルの外皮をかしめ工具のストリッパーを使って切り取ります。

(2)芯線の「より」を戻して 配線順に揃える

芯線の「より」を手で戻しながら、下図の通り配線順を揃えます。

結線には568Aと568Bがありますが、筆者は568A配線で結線しています。どちらもツイストする色の取り合いが違うだけで実質は同じ結線です。

(3)芯線を配線順にそろえながら14mmに切りそろえる

芯線の長さを14mmにカットします。長さは±1mmくらいの誤差であれば問題ありませんが、斜めに切断しないように注意します。

(4)芯線を爪で抑えながらRJ45プラグに挿入する

ケーブル順が変わらないように芯線を爪で押さえながらRJ45プラグに入れます。プラグの向き(ツメありとなしの方向)には十分注意してください。

単線仕様だと結構簡単にコネクタに入りますが、より線だとなかなか入らず難易度があがります。

(5)工具でカシメる

外皮がRJ45プラグのケーブル押さえ部まで入っていることを確認し、カシメ工具にRJ45プラグ毎挿入して、ラチェットのロックが外れるまでしっかりかしめます。

(6)ケーブルチェッカーで導通テストする

1-2本の導通が取れない場合は、カシメ力不足の可能性がありますので、再度カシメてから導通チェックして、問題なければ正常品として使えます。

芯線が隣のピンと導通している、ストレート結線でない場合は失敗です。その場合はコネクタを切断して、最初の工程からやり直しです。

 

失敗しないコツ

  • ケーブルのヨリをしっかり戻す:単線の場合は、ヨリモドシが悪いと、RJ45プラグに挿入する際、隣のピンに入ってしまいます。「より線」の場合は、線にコシがないため、ロードバー付きのRJ45プラグを買うほうが失敗が少ないです。
  • 芯線の線長はできるだけ14mmにする:線長が短いとカシメ部に到達できない線が発生します。線長が長いと外皮が固定されず、数回のコネクタ脱着でカシメ部が外れます。芯線の先の長さは目分量ではなく、きっちりと測って切断するようにします。
  • カシメは複数回する:単線の場合は、芯線が固いので強くカシメる必要があります。また数千円の工具は精度が良くないので、2回以上カシメておいたほうが品質が安定します。参考までにプロ用数万円のカシメ工具は精度がよく、ほぼ失敗ないです。高い道具には高いなりの機能があるものです。

配線前にアクセスポイントの設定方法を確認

下準備なしで中継モードにしていたアクセスポイントをLANケーブル接続に変更すると、アクセスポイントの初期化が必要になって大慌てになります。

ネットワーク構成を変える場合は、配線変更前に復旧や変更方法を確認してから作業を行うのが重要です。

筆者の今回工事は、WAC510というアクセスポイントの有線LAN化のみであり、WAC510のWireless Bridge設定をDisableにするだけで、有線LAN接続モードに変わる仕様でしたから、設定変更が簡単でした。

NEC製の民生用ルータの場合は、背面のスイッチ(ルーター:RT/ブリッジ:BR/中継モード:CNV)をブリッジモードに切り替えて、らくらく無線設定スタート機能からやり直ししないと行けないので、結構大変だと思います。ルータ設定は電源を切る前にシミュレーションを行ったほうが良いでしょう。

以上、失敗のないPoE LAN配線の解説でした。