PlayStaion5用コントローラ「デュアルセンス」のアナログスティックにおいて、原点に戻らないドリフト現象が発生したため、分解して清掃修理を行いました。
ゲームコントローラのアナログスティックのドリフト現象は、どのゲーム機でも1年くらい遊んでいると確実に発生しますので、故障の度にコントローラーを買い替えや修理に出すより、工具を揃えてDIY修理するほうが時間節約につながると思います。
ただし、この修理はハンダ作業を伴うことから、複数の専用工具が必須となり、一般的にはハードルが高い作業となります。
本記事では、アナログスティックDIY修理の準備編として、必要工具について解説します。
ドリフト現象が発生する理由
アナログスティックの動作原理は、可変抵抗器の抵抗値をオームの法則(V=IR)で電圧に変換し、ADコンバータを使って電圧値を読み取ることで位置検出する仕組みです。
したがって、動作不良はスティックを何万回も操作することで、抵抗接点が削れて可変抵抗値が狂うことが原因です。修理作業はスティック内の可変抵抗器を開けて、削れた抵抗接点のカスを除去することによりほぼ完全に復旧することができます。
アナログスティック部品は、ネットショップで2個1,000円くらいで互換品が売っています。部品交換することでも復旧できますので、分解清掃ではなく交換としても良いとは思います。
ただ、この可変抵抗の抵抗接点体は、部品内の基板に導体インクで印刷されているものなのですが、抵抗接点の削りカスを一度でも清掃すると、摩耗度合いが減って汚れなくなる傾向があるようです。
筆者は、過去にPSP、PS3、任天堂スイッチを清掃修理をしたことがあるのですが、再びドリフト現象が再現する状況にはなっていないため、部品交換よりも清掃修理のほうが長く使えると考えています。
直接パーツクリーナー吹付けはやめたほうがいい
Youtubeでは、自動車用パーツクリーナーやサンハヤトのスプレー式接点復活剤を抵抗接点に直接ふりかけている投稿も見受けられます。
しかし、ドリフト現象の原因は抵抗接点体の削れカスによるものですから、このような方法で復旧できるかは、パーツクリーナーの薬剤が不良箇所に到達し、削れカスが抵抗接点体から移動するかによるため運次第です。削れカスが抵抗接点体の上で固着してしまうと、症状が悪化して分解清掃でしか復旧できなくなるので、おすすめできる修理方法ではありません。
抵抗接点方式のアナログスティックは、動作精度やコストに優れる反面、耐久性だけがウィークポイントとなりますので、やはり分解して清掃するのが一番だと思います。(分解清掃できない抵抗接点方式タッチパネルは部品交換が基本です。)
修理に必要な機材と環境を揃える
この修理作業は、基板から部品を外す工程があるため、相応の機材と作業環境が必要です。
修理や測定作業は準備で品質が決まるといわれるくらい工具や部品の整備が重要です。作業前に十分確認をしておきましょう。
コントローラの動作検証治具について
PS4, PS5のアナログスティックの状態確認は、ゲーム機本体に調整・確認機能が存在しません(※)ので、コントーローラ単体で動作検証が出来る環境を構築する必要があります。※PlayStation系列はゲームアプリ側で調整機能が実装される仕様です。
コントローラの動作確認は、PCにコントローラを接続して、gamepad-testerというWebサイトに接続すれば動作が確認できます。このサイトは、PCでなくともAndroidスマホやAmazon Fireでも動作してくれます。コントローラ修理前に故障部分を特定しておきましょう。
任天堂スイッチは、ゲーム機本体にスティック調整・確認機能が実装されており、ゲーム機単体で調整が可能です。以前、任天堂スイッチのジョイコン修理もやっていますので、こちらの記事を参照してください。
分解工具について
PS5コントローラの外装は、はめ込みとネジで固定されていますので、開けるにはスマホ用オープン工具と0番プラスネジが必要です。
また、ケース内のフィルムフラットケーブルを外す必要がありますので、抜き差し用に細いラジオペンチがあったほうが良いです。ラジオペンチは無くても作業はできますが、挿抜が固いコネクタがあり、勢い余ってケーブルを切断する可能性がありますから、準備しておいた方が良いと思います。
- スマホ分解工具:iFixit jimmy オープナーが使いやすいです
- +ドライバー0番:AINEXのセット品が便利です
- 電子工作用ラジオペンチ:汎用品で十分です
ケースのツメ外しではiFixitの専用工具を使うと容易に作業を進めることができます。100均一で販売されているステンレス製スクレイパーの代用も出来ますが、できるだけ厚みが薄いものを購入してください。
ハンダ作業工具
PS4,PS5のアナログスティックは、部品が基板にはんだで固定されており、基板から外さないと清掃ができないため、はんだごてが必須となります。
修理用途で使うハンダゴテは、一気に加熱できる温度調節機能がついた70Wクラスのハイパワータイプが便利です。温調ハンダゴテはそれほど高額ではありませんので、今後ともDIY修理をする場合は買い揃えたほうがいいでしょう。
ハンダゴテを安全に扱うためにコテ台は少々良いものを準備しておいたほうが良いです。安価な簡易コテ台は、作業中にハンダゴテの電源ケーブルに引っ掛けたりして、怖い思いをしますので、ハンダゴテを買うときに一緒に揃えておくほうが良いと思います。
ハンダ吸い取り道具
基板部品の取り外しにおいては、固定されているハンダを除去する作業があるため、溶かした状態のハンダを吸い取るハンダ吸引器が必要です。ハンダ吸引器には手動と電動があり、手動のものは1,000円くらいで手に入ります。
ただし、手動のハンダ吸い取り器は、吸い取るのが一瞬で失敗する確率が高いため、ある程度の慣れが必要です。少々高価ですが電動ハンダソルダーは、失敗なく作業ができるだけでなく、作業効率も飛躍的に向上します。予算があればオススメの工具です。
ハンダは鉛入りを使用する
部品を外す前に行う予備ハンダや再接着時に使う修理用ハンダは鉛入りがおすすめです。
Rose対応品であるPS5コントローラは一般的にPbフリーハンダが用いられています。しかし、このPbフリーハンダは融点が高く、流動性も低いため、修理作業では極めて扱いにくく、加熱により基板や部品を痛める要因になります。
幸い日本は、Rose規制対象外となっているため、融点が低くて流動性の高い鉛入りハンダが容易に手はいります。修理部分のハンダを鉛入りハンダに置き換えてしまうと、次回の修理作業も楽になりますので、必ず買い揃えておくようにします。
部品除去用の低融点ハンダ(ビスマスが入っているらしい)というのも便利かもしれませんが、鉛入りハンダと電動ソルダー(またはハンダ吸い取り器+吸い取り線)で困ったことは無いので、わざわざ購入する必要は無いと思います。
洗浄用ケミカル剤
接点体の清掃は、プラスチックとゴムを侵さない電子部品用クリーナーがあると、効率よく清掃できます。ただし、接点汚れは綿棒で十分落ちますので必須工具ではありません。
電子部品用クリーナー剤は、KUREやサンハヤトなどから発売されていますが、内容量が多いKUREのクリーナーがコスパが良いと思います。
作業用マット
熱をかけるハンダ作業を伴いますので、作業用シリコンマットも購入しておいたほうが良いです。
大きさはA3サイズくらいまでが使いやすいと思います。色はネジを見失いにくい青色が使い勝手がよいでしょう。
予備部品の入手
アナログスティック部分の部品を壊したり、部品を紛失した場合に備えて、予備部品もあれば安心です。
ネットショップで「PS5 コントローラ 部品」で検索すると、たくさんの種類が販売されていますが、各ゲーム機により使われているアナログスイッチの抵抗値が違いますので、購入する際はレビュー評価などよく見て、コントローラに適合する部品を購入するようにしましょう。
ネット調べた限りの情報ですが、各ゲーム機のアナログスティック部品の抵抗値は、以下のようになっていました。
- PS5コントローラ:2.1KΩ(ALPS製)or 2.3KΩ(FU製:2K3表記)
- PS4コントローラ:1KΩ(103表記:互換部品あり)
- 任天堂Switchプロコン:1KΩ(103表記:互換部品あり)
<注意>PS5デュアルセンスコントローラのアナログスティック部品は、ALPS製とFU製の2種類があるそうです。パーツ購入前にコントローラを分解して、どちらの部品がついているか確認してください。
任天堂スイッチのジョイコン修理はハンダ作業を伴いませんので、こちらの記事でまとめています。
修理作業は作業環境が揃ってから実施
以上がゲーム機アナログコントローラのDIY修理における準備編です。
PlayStation4やPlayStation5のコントローラ修理はハンダ工具が必須となりますので、DIY修理で行うか、メーカ修理依頼にするか、修理をあきらめて新品コントローラを購入するかは、本記事をご覧になってよく検討してみてください。
実際の修理方法はこちらの記事にまとめさせていただきました。
2022.7.17追記)動画もアップしましたので映像で作業要領も確認してみてください。道具さえ揃えればそれほど難しくないですよ。