ソフトウェア無線で気象衛星NOAAの画像を受信(受信編)

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前記事において気象衛星NOAAから画像を受信する準備が整いましたので、今回は実際に受信を行い、画像編集まで行ってみます。

衛星が到来する時刻を確認する

衛星が到来する時刻は、WXtoimgでFile→ Satellite Pass Listを選択して確認することができます。

自分と衛星が通過する緯度が離れていると、電波が弱くなるので、出来るだけ自分の緯度に近いところで受信するほうが良いでしょう。

衛星画像は、夜だと可視光が入らず見た目であまり面白くないので、昼間の受信がおすすめです。

受信できる場所に移動してアンテナを設置する

家の中で衛星の電波は受信できませんので、屋外の出来るだけ見晴らしの良い場所に移動します。

衛星との間に障害物があると、電波がさえぎられてうまく受信できませんので、空が見えている場所、すなわち、山の頂上や建物の屋上が最高の受信場所(ロケーション)となります。

筆者の場合は、近隣に貯水池がありますので、車で移動して受信しています。

海、川、池の近傍は木が生い茂っておらず、電波をさえぎる障害物が少ないので、衛星の受信に適していると思います。

ダイポールアンテナを設置する

障害物がなく、受信できる場所に到着したらアンテナを展開します。RTL-SDR.COMに付属するダイポールアンテナは2mなので、めいいっぱい広げても同調ずれはあまりないと思います。

また衛星は、円偏波で電波を発射していますので、ダイポールアンテナをV型に展開すると、受信効率を上げるように受信ができると思います。

アンテナの方角は、衛星に出来るだけ垂直になるようにしたいので、北東か南東にむけてみます。

ネットを検索してみますと、円偏波用の受信アンテナがあれば、かなり綺麗に受信できるようです。

自作も容易らしいので、時間が出来たら作ってみようと思いました。

WXtoimgを起動する

初期設定を済ませたWXtoimgを起動します。

File→ Record→ Auto Recordをクリックして、自動受信にします。

下側にNext Sateliteの情報と受信開始までの時間(カウントダウン)が表示されていれば、WXtoimgの準備は完了です。

HDSDRで電波を受信する

HDSDRを起動し、電波の受信と復調を開始します。

WXtoingの下に衛星の周波数が表示されていますので、HDSDRの周波数を合わせます。

LO周波数は受信周波数と同じだと混信してうまく動かないので、100KHzほど低い値を設定するのが良いでしょう。

PCで周波数調整は、受信場所で操作すると時間に追われて大変慌ててしまうので、あらかじめFrequency Manager(FreqMgr)にNOAA15,18,19号の周波数を入れておくと楽です。

音声出力と帯域設定をする

周波数の帯域設定は50KHzあたりに調整します。HDSDRは48,000Hz(48KHz)がデフォルト設定値にあるので、48,000Hzに合わせておけば問題ありません。

Soundcardの設定で、VB-Audio-Virtualに設定したら、あとは衛星が到来するまで待つだけです。

衛星の電波が到来したら音量と周波数調整する

衛星の到来時刻になって、WXtoimgが記録を始めると右下がREC表示になるので、入力される音量を45~55になるように調整します。

また衛星は極めて高速(秒速7km)で周回しているので、光の速度である電波でもドップラー効果の影響で受信する周波数が高くなったり低くなったりします。概ね、衛星がこちらに向かってくる時は、3KHz程度高くなり、遠ざかるときは3KHz低くなります。

周波数の調整は手動で行ってもいいのですが、HDSDRには操作ダイアログにAFCのボタンがあるので、クリックしてONにすれば自動的に追尾してくれます。

ただし、AFCは周囲の高い電界強度に周波数を調整するので、ONにするタイミングは必ず電波が到来してから実施してください。そうしないと周囲のノイズや他の衛星通信データにAFCされてしまい周波数がずれっぱなしになってしまいます。

受信中は、WXtoimgにデコード中の写真が表示されているので適宜確認することができます。

WXtoimgで画像を加工する

衛星が通り過ぎる時刻になると、WXtoimgは音声記録を終了し、自動で画像のデコードを始めます。

衛星からは可視光と赤外光の2枚が送られており、以下のような画像が受信できます。衛星が遠い場所を飛んでいたり、受信条件が悪い部分はノイズが入ります。

きれいな画像が取れている部分は、WXtoimgのEnhancementsで1枚に加工することができます。

加工のおすすめは、MSA multispectral analysisです。可視光と赤外光を重ね合わせて立体的に見えるように加工してくれます。さらにOptions→ Map overlay Optionsでマップを重ねる設定をしていると、登録した位置座標からマップを重ね合わせてくれて、いかにも気象衛星の画像が完成します。

しかし受信状態が悪い場合は、重ね合わせで処理が出来ない場合があり、以下のような状態になることもよくあります。

その場合は、他のモードを選ぶと1枚に加工できる場合があるので、いろいろ試してみましょう。

Enhancementの加工は、音声データWAVファイルがあれば何度でもやり直しができますから、いろいろと触ってみて遊んでみて下さい。

受信状態が良ければ以下のような画像が得られます。画像は7月上旬で梅雨前線が本州にかかっている状態でした。

WXtoimgで画像が正常に表示されない場合

自分の環境では発生しなかったのですが、受信データの状態により画像がナナメになっていたり、地図が大きくずれて表示されることがあります。

このような場合は、WXtoimgの手動調整で対処できるので、HPのFAQを参考に調整を実施してみてください。

おわりに

SDRの購入で久々に受信機を扱ってみましたが、気象衛星NOAAからもきれいな画像受信が受信できるとはびっくりです。

衛星通信は、光の速さで伝搬する電波がドップラー効果により、受信周波数が変わることを実感できて、とても面白いです。

また衛星通信は、多くの物理法則が複雑に関連してくるので、中学・高校の物理の理解にもとても最適だとおもいます。

この実験にて理系を目指す方が増えたらいいなと思います。